大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和31年(ラ)314号 決定

抗告人 田中カネ(仮名)

主文

原審判を取消す。

本件申請を却下する。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は別紙の通りである。

しかし、本件申請は届出人の意思に基かない無効な分家届による戸籍記載の訂正についての許可を求めるというのであるから、それが戸籍法第一一四条に基きなされているものであることは明かであるが、同条による戸籍訂正の申請はその届出事件の本人又は届出人に限り許されるのであるから、その訂正についての家庭裁判所への許可申請もまたそれ等の者に限りなしうべきところ、抗告人が本件分家事件の本人でないことは申請自体に徴し明かであり、又右の分家届の届出人でもないことは記録中の戸籍謄本により認められるので本件許可申請はその資格のない者よりなされた不適法なものであるから、その申請が理由あるか否かの内容につき判断するまでもなく却下せらるべきであるのに、原審裁判所はその内容に立入つて審査し、実体的審判をしたのは失当であるからこれを取消し、本件申請を不適法として却下することとし、主文の通り決定する。

(裁判長判事 大野美稲 判事 石井末一 判事 喜多勝)

(別紙)

抗告の趣旨

一、原審判を取消す

本籍大阪府○○○郡○○町大字○○千四百○拾○番地戸籍筆頭者田中良市の除籍中

右田中良市の身分事項欄中○○○郡○○村大字○○千四百○拾○番地戸主田中辰郎弟分家届出昭和拾五年五月弐拾参日受附とあるを削除し

本籍大阪府○○○郡○○町大字○○千四百○拾○番地戸籍筆頭者田中辰郎弟と同戸籍を回復することを許可する旨の御裁判を求めます

抗告の理由

一、原裁判所たる大阪家庭裁判所堺支部は戸籍訂正の根拠である戸籍法第百拾四条の規定は形式上且つ簡易な場合の訂正を許す場合であつて本件の如き場合は確定判決を受けて初めて其の訂正が出来るものである即ち戸籍法第百十六条の規定の適用事項である旨の理由のもとに抗告人の申立を却下したが右却下には誤りがあると信ずるものであります

二、本件記録を精査すると父たる根本三郎が認知の手続を代書人に依頼した戸籍筆頭者の田中辰郎は分家の手続をした事はないとの事である然るに田中良市は分家せられて居る事実は明白に代書人が依頼せられざる事を為した行為で明白なる無効手続である事は本件では判明するのであります

故に抗告人に於ては其の届出の原本たる届出書類の取調を致した処当時所管官庁であつた堺区裁判所は戦災の為め保管書類を焼失し大阪法務局堺支局に引継して居らない事実もありますが本件の如きは簡易な戸籍法第百拾四条の適用あるものとして抗告人の主張の様審判を為すが正当と思料するので本抗告を申立る次第であります

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例